防水工事

  1. 防水工事

防水工事と聞いてもピンと来られない方も多いと思いますが、具体的にはベランダやバルコニー、屋上(陸屋根)などからの漏水を防ぐための工事がそれにあたります。ご存知のとおり、水分は建物の大敵です。建物内部に浸入してしまうと、木造では大事な柱や梁を腐食させていきます。鉄骨でも骨組みにサビを生じさせ、強度をどんどん弱くしていきます。そして、木造でも、鉄骨でも、石造りでも、建物内部に浸入した雨水は壁や天井を変色・劣化させ、美観を損ねます。さらに、カビも発生原因ともなるので、ぜんそくやアレルギーといった健康被害も引き起こしかねません。
適切なメンテナンスや定期点検で予防することが大事なのです。もし、雨漏りや漏水がはじまってしまったら、早急な対策が必要となります。

防水工事の目的と意味

まず、住まいにおける防水工事の目的と重要性についてお伝えします。

●防水工事の重要性

雨や雪が降りやすい日本では、住まいの快適さを維持し、家の資産価値を保つために建物を水から守ることが大切です。屋外から建物内へ雨水が浸入すると、建物の骨格を支える柱や梁(はり)の腐朽、鉄筋の錆などにつながります。
浴室やキッチンなどの水まわりも同様です。水漏れは悪臭や腐食の原因になるだけでなく、カビやダニなどを発生させ、健康被害の原因につながります。さらに長期間そのままにしておくと建物の寿命を縮めてしまいます。

そのため、建物の内外を定期的に観察して、異常が発生していないか確認するようにしましょう。特に地震や台風の後は、外壁などにひび割れ(クラック)や剥がれが発生していることがあります。

ただ、一般の人では壁の内側に隠された劣化まではなかなか見抜けないので、プロによる定期的な診断を受けることをおすすめします。新築住宅の建設後には、ハウスメーカーや工務店がアフターサービスとして無料で点検・補修を行ってくれるところが多いですが、期間は限定的です。プロの診断結果に基づき、適切な防水工事を行うことが住宅の耐用年数を延ばします。

●下地補修をしっかりと

防水工事のポイントのひとつは「下地補修」です。下地のひびや欠け、浮きなどを放置したまま防水工事を行っても雨水の浸入を防ぐことはできません。何事も土台が肝心ですが、防水工事の場合は下地補修がその土台にあたります。表面だけでなく、下地からしっかり補修を行いましょう。

防水工事の種類と特徴

防水工事には大きく2つの方法があり、使用する材料にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴をお伝えします。

●防水工事の工法

・密着工法

密着工法とは、浸水を防ぐための防水層を下地に密着させて行う方法です。下地にそのまま施工できるため工期が比較的短く済み、もう一つの「絶縁工法」と比べるとコストパフォーマンスが高いというメリットがあります。施工後は上に重い物を乗せたり動かしても大丈夫ですが、半面、下地に含まれる水分の影響を受けやすいので、維持管理をしっかり行わないとひび割れや膨れが発生しやすくなります。

●防水材別「防水工事の特徴」

・塩ビシート防水

塩化ビニールシートから作られた防水シートを下地に貼り付ける工法です。塩ビシートは耐久性が高く、施工時の美しい状態を維持しやすいという特徴があります。シートを熱風で溶かして貼り付けられるため、複雑な形状をしたところや狭い場所の工事にも向いています。ただし塩ビシートには「可塑剤」が添加されており、それが気化するとシートが固くなって割れやすくなるため注意が必要です。

・ゴムシート防水

合成ゴムから作られた防水シートを下地に貼り付ける工法で、「コストが安い」「施工しやすい」「工期が短期間で済む」といったメリットがあります。ただし、シートをしっかり接着する必要があるため、複雑な形状をした場所の工事には向いていません。

・塗膜防水

防水塗料を塗り重ねて水の浸入を防ぐのが塗膜防水です。例えば、ウレタン樹脂を塗り付ける「ウレタン防水」は、ゴム状で一体感のある防水層を形成できます。さらに、硬化するのが速い「超速硬化ウレタン防水」なら品質の安定性が、より高まります。
ほかにもアクリル樹脂を使った「アクリル防水」、シリコン樹脂を塗る「シリコン防水」、FRP(繊維強化プラスチック)を使う「FRP防水」、ゴムアスファルト系塗膜で行う「ゴムアスファルト防水」などがあります。

防水工事の種類別耐用年数とメンテナンス方法

防水工事は、施工される防水の種類によって耐用年数が異なります。それぞれの耐用年数とメンテナンスの方法をお伝えします。

●種類別耐用年数

防水工事の中でもアスファルト防水は100年以上の歴史があり、信頼感があります。耐用年数は17年から20年と長持ちしますが、その分コストもほかと比べて高くなる傾向があります。
一般家庭ではウレタン防水、塩ビシート防水、ゴムシート防水、FRP防水が多く行われています。耐用年数は維持管理状態などによって異なりますが、FRP防水が約10年、ウレタン防水・ゴムシート防水が10年から12年、塩ビシート防水は10年から13年程度を目安に考えると良いでしょう。

●メンテナンスの方法

防水工事の耐用年数を長くするためには、メンテナンスを行うことが大切です。まず施工後5年から10年の間は、目視で施工部分を定期的にチェックして、凹凸やひびが入っていないかを確認し、変化や傷みが目につき始めたら保護塗料を上から塗って防水材を守る「トップコート」を行いましょう。
ただし、施工から10年以上が経過すると劣化が進んできます。20年目を迎える頃には雨漏りや水漏れなどが発生する可能性がありますので、そうなる前に専門家に診てもらうことをおすすめします。

防水工事の費用と期間

気になる防水工事の費用と期間についてお伝えします。工事の流れを理解しながら、目安を把握しておくと役立ちます。

●防水工事の手順

まず、リフォーム会社の担当者が防水工事を行う建物の調査・診断を行います。診断結果をもとに防水工事の方法や使用する防水材の種類を選んだら、費用などを掲載した見積書が作成されます。
リフォーム契約を結んだ後、下地処理・防水工事・塗装まで終わったら、工事完了です。確実に施工されているかどうかを依頼者がチェックし、納得できれば引き渡しを受けることになります。

●防水工事にかかる期間

バルコニー・ベランダの防水工事であれば数日で終わることもありますが、足場を組む必要がある屋根や屋上、それに伴う関連工事が必要な場合は、工期が2カ月くらいに及ぶことがあります。また雨の日の多さなど天候によっても工期は変わるので、防水工事のタイミングを決める際は季節や気候の変化も考慮しておいたほうが良いでしょう。